2008年11月7日金曜日

Small is Beautiful

UNIXの開発者である、ケン・トンプソンとデニス・リッチーはその設計理念のひとつに"Small is Beautiful"(小さきことが美しい)を掲げています。これはマイクロカーネルと呼ばれる考え方の原点です。

デバイスも含めてリソースをファイルという概念で捉えることや、標準入出力、パイプ、シェルなど、UNIXの特徴はコンパクトなOSとしての機能実現が根底にあります。この考え方は、高度なコンピュータの実現を、より複雑な構成で実装しようとする考えとは逆で、よりコンパクトに構成したものをシンプルにつなぎ合わせて高度なものを実装しようという美学です。

コンピュータの世界では、要求される機能を、定義・設計するときに、あるがままを複雑に捉えてしまうことは、往々にして扱いにくいものになりがちです。複雑な事柄も突き詰めていけば簡素で分かりやすいことだったりします。つまり「木を見て森を見ず」的な局所にこだわるのではなく、全体像から本質を見抜く力を養うことが大切です。複雑なことも、細分化すれば案外、単純なことの集合だったりします。


実はこの言葉、E.F.シューマッハのスモール イズ ビューティフル―人間中心の経済学(1973年)からきています。

人類の物質至上主義を警鐘し、最小の活動こそが経済繁栄と自然生態系の共存の道であると説きます。今の時代のエコやロハスと同じ考え方です。人間はいつになっても同じことをやっているのですね。

これは70年代アメリカの反戦運動、自然回帰、ヒッピー文化につながる考え方のひとつだと思いますが、それまでのコンピュータの固定観念からの離脱であり、UNIXがオープンと呼ばれる由縁でもあります。

開かれた技術革新とシンプルな思想が美学を生むということです。


アメリカはオバマ政権に交代しますが、これを機に「小さく考えて、シンプルに生きる。」ことに価値を見出してほしいものです。